magattacaのブログ

日付以外誤報

低分子でタンパク質の量を制御 〜アゴニストでもアンタゴニストでも阻害剤でもないMOA〜

創薬 Advent Calendar 2018 - Adventar 13日目が空いていたので埋めます。

創薬アドベントカレンダーを読むような方々には釈迦に説法という感があり恐縮なのですが、しばしお付き合いいただければと思います。

 

 言うまでもありませんが、医薬品となる化合物の多くがタンパク質と結合し、その薬効を発揮してます(*1)。インシリコ創薬に関する話題でいえば、結合するか否かの予測(ドッキングやSBVS)や活性の予測ということになると思いますが、ではその活性ってどんな種類があるの?ということについて調べました。

 

 活性の種類(作用機序: MOA)といえば、多くはアゴニストやアンタゴニスト・阻害剤として機能していると思います。タンパク質と結合して、本来のシグナルを流すスイッチをONにするか、流れているシグナルを止める、酵素活性を阻害するといった感じです。これらは基本的に結合の対象となる”タンパク質の機能"に対して影響を及ぼすことで、薬効を発揮しています。

 

 ところで低分子医薬品の中には、"タンパク質の量"のコントロールを行うものもあるそうです。そこで今回、そのようなメカニズム、プロテインノックダウン法ケミカルシャペロンについてとりあげたいと思います。

 

 

①タンパク質の分解を誘導する (プロテインノックダウン法)

 GPCRのようにシグナルに関与するわけでもなく、キナーゼのように酵素活性があるわけでもない、そのようなタンパク質を標的として創薬を行うにはどうすればよいか?

 

「そんなの壊してしまえばいいじゃない」

 

というラディカルな発想がこのメカニズムです。

 

ユビキチン-プロテアソーム系

 タンパク質の分解を低分子によって誘導してやろう、というわけなのですが、このため生体内にもとからあるタンパク質分解機構「ユビキチン-プロテアソーム系」を利用します。こちらは2004年にノーベル化学賞を受賞した機構ですが、2016年のノーベル生理学・医学賞「オートファジー」が不要なゴミをざざっと分解するのに対して、もう少し精密(?)で特定のタンパク質を狙って分解するという仕組みです。

 

 具体的には標的となるタンパク質をユビキチンで標識し、その標識を頼りにプロテアソームが分解を行います。ユビキチン標識にはユビキチン活性化酵素(E1)、ユビキチン結合酵素(E2)、ユビキチンリガーゼ(E3)と呼ばれる酵素群素が関与しますが、このうちE3リガーゼが分解の標的となるタンパク質の認識に重要となります。

 

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Fig. 1 ユビキチン-プロテアソーム系 (*2)

 プロテアソーム阻害剤 

 本題のプロテインノックダウン法とは異なりますが、すでにユビキチンープロテアソーム系を標的とした医薬品は上市されており、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブというものがあります。両者ともにプロテアソームを標的とするプロテアソーム阻害剤で、ホウ素を含んでいたりエポキシケトンがあったりと、あまり医薬品では見かけないような(毒性が出ないか心配になる)構造をしています。

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Fig. 2 プロテアソーム阻害剤の構造式 (Wikipediaの該当記事より引用)

 ボルテゾミブはプロテアソームの可逆的阻害剤、カルフィルゾミブは不可逆的阻害剤です。ざっと見る限り副作用も多いようですが、適応は多発性骨髄腫。生死に関わる疾患であるだけに、薬効とのバランスで、ある程度の副作用性は許容されるのでしょうか? ( 薬効と毒性の問題については創薬アドベントカレンダー 7日目のこちらの記事 でも取り上げられていましたので、未読の方は是非ご一読を!)

  

 ところで、上記のカルフィルゾミブの発見に携わったのがYale大学のCraig M. Crews教授(Crews Laboratory)ですが、プロテインノックダウン法においてもキーパーソンです。

 

プロテインノックダウン法 

 プロテインノックダウン法では、プロテアソームではなくユビキチン標識に働く酵素群をターゲットとしています。今、ユビキチン化の基質認識に働くユビキチンE3リガーゼ(A)と結合する化合物(X)が手元にあるとします。これとは別に、壊してしまいたい標的のタンパク質(B)と結合する化合物(Y)を見つけてきます。この2つの化合物XYをうまくリンカーでつないで、新しい化合物(Z)を作ります。ZはE3リガーゼ(A)とタンパク質(B)の両方に結合するため、Zによって両者が引き寄せられます。するとE3リガーゼがタンパク質Bを分解すべきタンパク質だ、と認識してユビキチン標識を行います。ユビキチン標識されたタンパク質Bはプロテアソームにより分解されるため、狙ったタンパク質を分解することができる、というのがこの手法のコンセプトです。

 

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Fig. 3 プロテインノックダウン 法概略図 (*3)

 

 プロテインノックダウン法ですが、いくつか流派(?)があり、それぞれ利用するE3リガーゼや、E3リガーゼに結合する部分構造などに違いがあるようです。

 上述のCrews教授らはPROTAC法(Proteolysis Targeting Chimeraの略)と名付け、von Hippel-Lindau (VHL)やcelebron(CRBN)をE3リガーゼとして用いています(Fig.3 参照)。また、Blander博士らはDegronimidと名付け、同じくCRBNを標的E3リガーゼとしていますが、E3リガーゼのリガンドとしてサリドマイド誘導体を用いています。日本では国立医薬品食品衛生え研究所の内藤先生・大岡先生らのグループでE3リガーゼとしてIAPを用いたSNIPER(Specific and Nongenetic Inhibitor of Apoptosis Protein(IAP)-dependent Portein Eraser)という技術の開発が行われています。

 

 新しい創薬の手法としてプロテインノックダウン 法は注目を集めており、今年は第一回目となる国際会議Targeted Protein Degradation Summit 2018なども開かれたそうです。

 

長所・短所

 では、プロテインノックダウン法には従来の創薬手法と比較してどのような長所があるのでしょうか?

 

長所①

 まず標的とできるタンパク質の範囲が広がったということがあげられます。"Drugging Undruggable Targets"というキャッチーなフレーズが表すように、従来の低分子医薬品では標的とすることが難しかったタンパク質を標的とすることができる、と言われています。繰り返しになりますが、酵素として働くわけでも、シグナル伝達に関わるわけでもない、それ自体の機能が明確ではないタンパク質であったとしても、結合する部分構造さえ見つけてしまえば、分解というアプローチで標的とすることができます。

(妥当かどうかは置いておいて)わかりやすい例ではアルツハイマー病との関連が示唆されているアミロイドβや、パーキンソン病と関連するα-シヌクレインがあげられるでしょうか? 両者ともに細胞内に蓄積することで神経細胞死を起こす、といわれているため、分解を誘導し蓄積を解消できれば治療効果が期待できるかもしれません(*4)。

 

長所② 

 また、結合の位置がタンパク質の機能と関わりのある場所である必要がないため、高い選択性をもつ化合物が得られる可能性があります。例えばキナーゼを標的とする場合、多くの低分子阻害剤は酵素活性と密接に関係するATP結合サイトを結合サイトとして利用しています。ところが、機能と密接に関係する部位のため、異なるキナーゼ間でもタンパク質の構造の類似性が高く、狙ったキナーゼのみを阻害することが難しくなります。

 一方で、プロテインノックダウン 法であれば、目的は酵素機能の阻害ではなく、とにかく結合してユビキチンE3リガーゼへと誘導できればよいわけですから、化合物の結合部位の選択肢が広がります。したがって、狙ったタンパク質に特有の部分構造(あまり進化で保存されて部位など?)を結合部位として利用できる可能性があり、その意味で高い選択性を発揮するポテンシャルがあります。

 

もちろん長所ばかりではありません。

 

短所①

 Fig. 3のPROTACの分子構造を見ていただければ一目瞭然ですが、二つの構造を繋ぐという手法のため、分子が巨大化しやすいという問題点があります(単純化すれば従来の低分子 x 2以上の分子量)。昨年の創薬アドベントカレンダーの記事(Druglikenessについてのよもやま話 – y__sama – Medium )でもとりあげられていましたが、一般に、分子量の増大は低分子医薬品にとってはできれば避けたいといわれています(Rule of 5)。理由としては細胞膜透過性の低下による経口吸収性の低下や、薬物動態の悪化、などでしょうか?、、、とにかくあんまり良く無いっぽい(適当)

 

短所②

 また、プロテインノックダウン 法の化合物は2種類のタンパク質に同時に結合しなければなりません。したがって、単純に「化合物 対 タンパク質 = 1 対 1」とくらべて結合のために出会う確率が下がります。そのため、細胞系の実験では高濃度にしなければ望みの効果が発揮されないといった問題点も指摘されていました。この点については、より洗練された化合物の開発により低濃度でも薬効を示すものが見出されているそうです。

実用化に向けて

 肯定派・否定派さまざまな意見があるようですが、低分子で標的とできるターゲットタンパク質はあらかた出尽くした、とか、ターゲットが枯渇している、などと言われてている医薬品業界で、このように新しい創薬の手法・標的タンパク質の可能性を広げるプロテインノックダウン 法は期待されており、様々なベンチャー企業が開発に乗り出しているようです。例えば、Crews教授らは現在Arvinas 社を設立し、経口投与で薬効を示すPROTAC化合物の臨床試験を準備しているとのことです。また、Blander博士はC4 Therapeuticsを設立しています。他にもkymera 社や、 日本ではFIMECS, Inc. 社が設立されたりと、これからの動向が大変興味深い分野です。(*5)

 

 さて、タンパク質の量を減らす試みを見てきましたが、ついでタンパク質を増やす方向を見てみたいと思います。

 

 ②ケミカルシャペロン(ファーマコロジカルシャペロン)

 上述のプロテインノックダウン法では生体内の不要なタンパク質を分解する仕組み、ユビキチンープロテアソーム系を利用していました。この不要な"ゴミ"タンパク質の中には、本来の機能を発揮するための3次元構造をとれず、機能の失われたミスフォールドタンパク質も含まれます。

 

 機能しないタンパク質とその治療という話題では、近年、脊髄性筋萎縮症を対象とするSpinrazaや デュシェンヌ型筋ジストロフィーを対象とするExondys 51といった核酸医薬品が注目を集めています。これよりすこし遡りますが2012年、嚢胞性線維症(Cystic Fibrosis)を対象としてKalydeco(一般名; ivacaftor、Vertex社)という低分子医薬品が、ついで2015年Orkambi(ivacaftorとlumacaftorの合剤)がFDAにより承認されました。ivacaftor、lumacafrorは機能するタンパク質を増やすことにより治療効果を発揮する医薬品です。

 

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Fig. 4 嚢胞性線維症治療薬(構造式はWikipedia 該当記事より引用)

嚢胞性線維症

 嚢胞性線維症(Cystic fibrosis: 以下CF)は、常染色体劣性遺伝疾患で、日本では非常に稀な疾患ですが、米国では約3万人のCF患者がいるとされています。原因は、塩素イオン・水の輸送を調節する塩素イオンチャネルをコードするCFTR(cystic fibrosis transmembrane conductance regulator)遺伝子の変異で、このイオンチャネルがうまく機能しないことで全身の外分泌機能に異常をきたします。平均生存期間が約20年ともいわれることから、深刻な疾患であることがわかると思います。(*6)

 

CFにおける変異の分類とタンパク質の機能

 CFと一口に言っても様々な遺伝子の変異の種類があり、各変異遺伝子の産物であるイオンチャネルの機能の欠損の度合いには差があります。文献 (*7)を頼りにその分類を見て見ましょう。

 CFTRの変異は大きく2つ、

分類①: そもそもイオンチャネルが本来機能する場所である細胞膜上に達することができない(Class I、Class II)

分類②: 細胞膜上には移行するもののイオンチャネルとしての開閉機能に問題がある(Class III、Class IV、Class V)

とに分けることができます。

 より詳細には、Class I の変異では核で産生されるタンパク質が短く欠失、Class II はミスフォールドによりゴルジ体にとどまる。Class III、Class IVは全長のCFTRが細胞膜上に発現できるものの、イオンチャネルのゲート開閉機能がうまく働かない(Class III)、イオン透過能(conductivity)が低い(Class IV)といった問題があります。また、Class Vは正常のCFTRですが数が少なくなるという変異です。

  

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Fig. 5 CFTR変異の分類とIvacaftor、Lumacaftor の標的

各変異をレスキューするための作用機序(MOA: Mode of Action ) 

 では、各変異に対しどのような治療戦略が考えられるでしょうか?

 

 変異の分類①の時は、まずは細胞膜上のCFTRを増やすことが治療の第一歩となります。つまりCFTRの合成を改善(対Class I)、細胞膜への輸送異常を改善(対Class II)となります。一方、分類②では、細胞膜上でCFTRがイオンチャンネルとしてうまく機能できるように手助けしてやる(対Class III)ことがあげられます。

 上述の薬剤では、LumacaftorはClass II の変異(delF508)に対して膜移行を助けるケミカルシャペロンとして、Ivacaftor はClass III の変異(G551)に対してイオン透過能を上昇させるポテンシエーターとして働くとされています。

 

ケミカルシャペロンって? 

 前置き無しにケミカルシャペロンという言葉を導入しましたが、そもそもシャペロンとは何でしょうか?

シャペロン: chaperone)とは、他のタンパク質分子が正しい折りたたみ(フォールディング)をして機能を獲得するのを助けるタンパク質の総称である。分子シャペロン: molecular chaperone)、タンパク質シャペロンともいう。 (シャペロン - Wikipedia)(*8)

 

 ケミカルシャペロン(ファーマコロジカルシャペロン)は低分子化合物でありながら、タンパク質のミスフォールドを修正し、適切な高次構造形成の補助・安定化に働くもののことを言います。

Lumacaftorのシャペロン効果の検証

 ケミカルシャペロン、コンセプトとしてはわかりますが、その効果はどのように検証すれば良いのでしょうか?2011年Vertex社の論文 (*9)を参照して見ましょう。

 まず、ミスフォールドする変異CFTRは、翻訳後修飾(グリコシル化など)がうまく行われず、修飾が正しく行われた正常なCFTR(mature : 成熟)と糖鎖修飾のパターンが異なります(immature : 未成熟)。糖鎖のパターンは細胞内でのタンパク質輸送を左右するため、これが、未成熟な変異CFTRが小胞体-ゴルジ体から細胞膜上へと移行できない理由となります (*10)。

 下図は、上記文献Fig. 3Aの引用ですが、左上の図から正常のCFTRと変異CFTRでゲル上の位置が変わってくることがわかります。さらに図中左下から、Lumacaftor処理により濃度依存的に成熟型CFTRの比率が増えている様がわかります。 

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Fig. 6 Lumacaftor作用の検証 (in vitro)


 文献中にはCFTRの成熟に関する他の実験、および細胞膜上でのイオンチャネル機能に対する効果の検証もおこなわれており、複数の実験の組合せから、Lumacaftorが変異CFTRのフォールディング補助と、それに続く翻訳語修飾(プロセッシング)を促進する効果が検証されています。オープンアクセスとなっていますのでご興味があるかたは是非元の文献を参照していただければと思います。    私の読解は間違っている可能性が高いので・・・ (*11)

 

 Ivacaftor、Lumacaftorという画期的な医薬品によりCFは完全に治療できるようになったか?というと残念ながらそうではありません。見てきたようにCFには様々な変異の種類があり、これら医薬品で治療可能な範囲には限界があります。Vertex社は継続して様々な変異への適応拡大を目指した臨床試験・新規医薬品の研究開発を進めているようなので、治療環境が改善していくと期待されます。

 

ケミカルシャペロンの利点?

 上記のように遺伝子変異に由来する疾患に非常に有用なことが示唆されるケミカルシャペロンというMOAですが、このような疾患に対する治療戦略としては他にも核酸医薬、ウイルスべクターによる遺伝子治療酵素補充療法など、様々なアプローチがありうると思います。これらと比較した場合の利点は何でしょうか?よく言われるように低分子はコストが安い、ということでしょうか?

 この点については明確にそうだとは私は言い切れません。確かに製造コストは安くなるかもしれませんが、希少疾患である以上、莫大な研究開発費を補うため、一人当たりのCFの治療費は非常に高額なものとなっています。

 では低分子ならではのメリットとはなんでしょうか?

長所①:

 低分子の他のアプローチに対する利点はまずは薬物動態上のメリットです。核酸医薬では血中の安定性が悪かったり、特定の組織に集積しやすく全身暴露がかかりづらい、といった問題や、酵素補充療法では血液脳関門(BBB)を透過できないため中枢の症状には効果がでない、といった問題があります。低分子では全身暴露・中枢移行性ともに解決可能な可能性が高く、もちろん経口投与も大きなメリットです。

長所②:

 また、酵素補充療法(リコンビナントタンパク質補充療法)では、抗タンパク質抗体の出現により、効果がなくなったり、過敏反応、アナフィラキシーショック半減期の短縮といった問題が生じる可能性があります。この点でもおそらく低分子が優位でしょう。(*12)

 

もったいぶったわりに普通の結論になってしまった!!

 

他の事例と今後の期待

 これまでVertex社のアプローチをみてきましたが、ここしかないの?と言われるとそんなことはありません。 

 「小さな命が呼ぶとき」というアメリカ映画のモデルともなったAmicus Therapeuticsという希少疾患をメインターゲットととする製薬会社があります。Amicusの開発したファブリ病(α-ガラクトシダーゼの変異による遺伝性疾患)治療薬、Migalastat(Wikipedia) もその作用機序はケミカルシャペロンで、日本ではガラフォルド®️として今年(2018年3月)製造販売承認が取得されています(*13)。

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 Vertex、Amicusともに遺伝性疾患を対象として、変異により機能障害のおきたタンパク質を低分子により機能回復させています。何故、上述のケミカルシャペロンや、ポテンシエーター(アロステリックモジュレーターに近い?)といった作用機序が魅力があるか? というと、ゲノム解析の進展との関係で興味深いと思うからです。遺伝子レベルの変異の同定と、タンパク質構造・機能の違いの解析が加速した際に、変異し機能が損なわれたタンパク質の機能回復、という選択肢はまだまだポテンシャルがあるのではないかなあ、と思います。・・・こいつ何にもわかってないなと聞き流してください

 

まとめ 

 以上、本記事では"タンパク質の量を低分子でコントロールするMOA"という内容で、分解させるプロテインノックダウン法と、増加させるケミカルシャペロンというアプローチについてざっと見てきました。あまり薬理学の教科書でメジャーに扱われる作用機序では無いと思うので、そんなのもあるのかーと思っていただけたら幸いです。

(私が知らないだけで薬学会では一般常識かも・・・)

 私自身は専門家では無いため、記事のなかに誤りや不適切な表現が多数あると思います。ご指摘いただければ幸いです。

 

以上。お付き合いいただきありがとうございました。

 

 

 

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*1

低分子化合物に限っています。DNAと相互作用するシスプラチンのようなものもありますが、話を簡単にするために省いています。

*2

Fig. 1 は以下を引用し、改変して作成

2-1) Wikipedia (https://ja.wikipedia.org/wiki/プロテアソーム )

By Rogerdodd, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1291009

2-2)

脱ユビキチン化酵素Ubp6はプロテアソームの分子集合を制御する(http://first.lifesciencedb.jp/archives/3121

佐伯 泰・田中啓二 (東京都医学総合研究所 蛋白質代謝研究室)

ライフサイエンス新着論文レビュー 2011年7月11日 DOI: 107875/first.author.2011.105

http://first.lifesciencedb.jp/archives/3121

© 2011 佐伯 泰・田中啓二 Licensed under CC 表示 2.1 日本 

  *3

Fig. 3作成にあたって、以下を改変・引用

PROTAC-induced BET protein degradation as a therapy for castration-resistant prostate cancer. - PubMed - NCBI 

Proc Natl Acad Sci U S A. 2016 Jun 28; 113(26): 7124–7129.

*4

アミロイド仮説は臨床試験がことごとくうまくいっていないためそれ自体を疑う意見もあるようですが、わかりやすいのであくまで例としてあげました。 

*5

その他、プロテインノックダウンに関係して参考にさせていただいたもの

5-1) SNIPERの解説・およびプロテインノックダウン法の日本語によるレビュー

https://www.jstage.jst.go.jp/article/yakushi/138/9/138_18-00113/_pdf/-char/ja

5-2) とてもわかりやすいブログ記事:

タンパク質分解誘導薬とは?これまでの薬と違う新しいタイプの薬 | Luck Is What Happens When Preparation Meets Opportunity 

 *6 

 嚢胞性線維症の概要に関しては以下を参考にしました。

6-1) 小児慢性特定疾病情報センター 嚢胞性線維症

https://www.shouman.jp/disease/details/03_06_008/

http://www.nanbyou.or.jp/entry/4532

6-2) 

難病情報センター | 嚢胞性線維症(指定難病299) 

*7 

7-1) Ivacaftor: A Novel Gene-Based Therapeutic Approach for Cystic Fibrosis

Condren ME, Bradshaw SM. J. Pediatr. Pharmacol. Ther. 2013;18(1): 8-13

 上記文献はFig. 5作成にあたっても改変し引用

7-2) Cystic fibrosis transmembrane conductance regulator protein repair as a therapeutic strategy in cystic fibrosis

Sloane PA, Rowe SM.Curr Opin Pulm Med. 2010;16(6):591-7.

*8

シャペロンの代表的な例としては大腸菌のGroELがよく取り上げられています。 

GroELの機能などのわかりやすい解説(日本語)

Journal of Japanese Biochemical Society 87(2): 194-204 (2015)

*9

Correction of the F508del-CFTR protein processing defect in vitro by the investigational drug VX-809

Proc Natl Acad Sci U S A. 2011;108(46):18843-8. 

上記文献はFig. 6作成にあたっても改変し引用 

*10

糖鎖修飾に関しては以下のページの説明がわかりやすかったです。

大阪大学大学院理学研究科化学専攻有機生物化学研究室 

梶原研究室HP 研究の背景

*11

 なお上記文献およびVertex社の他の文献中で、Lumacaftorはシャペロンとは呼ばれておらず、タンパク質のプロセシングを正常化する"corrector"と呼ばれていました。あえてなのか意図はわかりませんが、Fig. 6からもわかるように、ミスフォールドしたタンパク質を正常な高次構造に戻す様を直接明確に示す実験は困難で、糖鎖修飾やイオンの流出入量の調節といった間接的な機能改善の実験的証拠のみがあげられています。したがってケミカルシャペロンだ、と言い切るのは誤りかもしれませんが、簡単のためケミカルシャペロンの例として今回取り上げさせていただきました。

*12

もちろん低分子でも代謝産物がハプテン化し、過剰な免疫応答を起こすといったリスクはあります。

*13

トランプ大統領が映画のモデルとなったAmicusのCEOと面会したのが承認申請の強い後押しになった、なんて話も・・・