magattacaのブログ

日付以外誤報

ニューモダリティはあなたの中に? 〜FMTが承認された話〜

あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

早速ですが・・・

「モダリティって200種類あんねん」

と、いうわけで、新年初記事は、昨年末FDAに初めて承認されたモダリティFMTについて取り上げたいと思います。

注)お食事中には読まないでね!

花子さんもビックリ!*1

注) この記事には医療に関わる内容を含みますが私は医療従事者・専門家ではありません。正しさを保証できませんのでご留意ください。

初のFMT、Rebyota

FMTとはFecal Microbiota Transplantation(糞便移植、便微生物移植)の略です。日本語で書くとなかなかインパクトのある名前ですね。

おおざっぱにいうと「健康なヒトの腸内細菌叢(microbiota)を患者さんに移植して疾患を治療しよう!」ってやつです。

初めて聞くと「ウソやん・・・」って感じですが、れっきとした治療法で、昨年末、FDAより初の糞便細菌叢製剤であるRebyotaが承認されました。

適応はクロストリジオイデス・ディフィシル感染症Clostridioides difficile infection、CDI)の再発予防です。

Rebyota(RBX2660)はもともとマイクロバイオームに焦点を当てて医薬品開発を行っているRebiotix社により開発されていましたが、現在は買収されFerring Pharmaceuticalsの傘下となっているようです。*2

CDIってどんな?

さて、Rebyotaの適応となっているCDIとはどのような疾患なのでしょうか?

MSDマニュアル(家庭版)「クロストリジオイデス・ディフィシャル腸炎」などを参考に、かいつまんで見るとこんな感じ。

抗菌薬によるディスバイオーシスで、特定の細菌が増えることでおこる感染症のようです。このCDIが重度で再発が続くことがあるらしく、これがRebyotaの適応症です。

承認時のFDA News Release(前掲)によると、アメリカではCDIに関連する死者が年間15,000 ~ 30,000人となっているそうです。こんなに深刻なものとは全く知りませんでした。

Rebyota の有効性について

では実際にRebyotaの有効性はどのようなものだったのでしょうか?

Ferringa社より公開されている添付文書を参照してみます。(添付文書PDF

ベイズ解析の結果、8週の盲検化治療後の推定治療成功率がREBYOTA群(70.6%)、プラセボ群(57.5%)であり、13.1%の差があったそうです。これはREBYOTAがプラセボよりも優れている事後確率(Posterior Probability of Superiority)99.1%に相当し、あらかじめ定義されていた閾値(Pre-defined threshold)97.5%を上回るものでした。

・・・さっぱりわかりません。多分効いてる。。。

Phase IIIの臨床試験の論文も公開されているようなので、詳しい方説明してください。(オープンアクセス、CC BY-NC 4.0)

Khanna, S., Assi, M., Lee, C. et al. Efficacy and Safety of RBX2660 in PUNCH CD3, a Phase III, Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial with a Bayesian Primary Analysis for the Prevention of Recurrent Clostridioides difficile Infection. Drugs 82, 1527–1538 (2022). https://doi.org/10.1007/s40265-022-01797-x

それっぽいのだけ引用しておきます。6ヶ月間続けて追いかけた時のCDI再発のカプラン・マイヤー分析です。

プラセボよりREBYOTA(RBX2660)群の方が再発率が低いままのようですね。

Rebyotaだけじゃないよ!

さて、ざっとRebyotaについて見てきましたが、マイクロバイオームを利用した創薬には他にどんなものがあるのでしょうか?

まずは同じCDI再発抑制を目的としたFMTとして、経腸製剤であるRebyotaに対して、経口製剤であるRBX7455(Rebiotix社, Ferring社)やSER-109(Seres Therapeutics)などが現在臨床開発中のようです。後者にはNestleも開発に関わっているそう。なかなか興味深い取り組みですね。

また、FMTの他にLBPs(Live Biotherapeutic Products)というものもあるそうです。FMTでは「どの菌種が疾患の治療に効果があるのか不明」なのに対して、LBPsでは「着目すべき菌種を同定し、単一ないし複数種の腸内細菌製剤」を用いるという違いがあります。

CDI再発抑制を適応としたLBPsもあり、Vedanta BiosciencesのVE303や、Finch TherapeuticsのCPT101といった開発品があるそうです。

まとめと参考資料

以上、今回は新年に相応しく(?)、最近承認された新しいモダリティとしてFMTをとりあげてみました。専門外すぎて雑な記事ですみません。

マイクロバイオームの医療への応用としては、他にもさまざま疾患があり、また治療だけでなくバイオマーカーとして診断に利用する取り組みもあります。以下の日本語資料がわかりやすくおすすめです*3

  1. 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA) 科学委員会専門部会 マイクロバイオーム専門部会
    マイクロバイオーム研究に基づいた細菌製剤に関する報告書
    (右ページにてPDFを閲覧可:議論の取りまとめ報告書
  2. 医薬産業政策研究所 政策研ニュース No.67 2022年11月発行
    新モダリティの開発動向調査 -mRNAとマイクロバイオーム-
    医薬産業政策研究所 主任研究員 高橋洋介 氏による記事

不勉強でよく知らなかった分野ですが、門外漢でもこの数年で目にする機会がぐっと増えた腸内細菌に関する創薬。承認され実用化されるまで進んでいるとは知りませんでした。技術の発展はすごいですね。

正直、「糞便移植」という言葉を初めて知った時はちょっと抵抗感を感じてしまいましたが、人体に共生しているシステムを利用してバランスを取り戻すという点ではとても興味深いです。

ところで昨年は本当に今は2020年代なのかとちょっと目を疑うようなニュースが多かったです。ちょっとディスバイオシス感ある世の中に一刻も早くバランスが戻るといいですね。

・・・上手くまとめられなかった。

今回も色々と間違いが多いと思います。ご指摘いただけると嬉しいです。ではでは!

*1:イラストはいらすとやさんより

*2:少し古い記事を参照すると社名が違っていて混乱するかもしれないので一応書いときます。

*3:今回参考にさせていただいた資料です